機械装置・システム構築費の概要
新たな挑戦を後押しする「新事業進出補助金」。その活用を検討する上で、多くの事業者がまず気になるのが、「どこまで経費として認められるのか?」という点ではないでしょうか。補助金の採択を受けた後、実際に補助対象となる費用は限られており、公募要領に従って正しく申請することが不可欠です。
その中でも、特に重要かつ申請件数の多い経費区分が「機械装置・システム構築費」です。この区分は、補助対象事業の実行に必要な設備やシステムに関する費用を指し、「建物費」と並び、どちらか一方を必ず計上する必要がある“必須経費”となっています。
しかし、公募要領を読むと、「対象」「対象外」「条件付きで対象」など、細かい規定が多く、一読しただけではなかなか理解しにくいと感じる方も多いはずです。たとえば、機械装置といっても、すべての設備が補助対象になるわけではありません。単価の要件があるほか、既存設備の単なる買い替えは対象外とされており、「どんな目的で、どのように使用するか」が厳しく問われます。
また、ソフトウェアやITシステムに関しても、導入する内容によっては補助の対象外とされることがあり、実は間違いやすいポイントでもあります。PR目的のWebサイトは対象外、一方で顧客管理や業務効率化のためのシステムは対象になるといったように、用途の違いによって判断が分かれるのです。
この導入部分では、まず「機械装置・システム構築費」がどのようなもので、なぜ重要なのかを整理した上で、次章からは個別に対象となる経費とその判断基準を、具体例を交えて詳しく解説していきます。補助金の活用を無駄にしないためにも、「何が対象で、何が対象外か」を明確に理解しておくことが大切です。
① 機械装置・工具・器具の購入・製作・借用
―「新しい挑戦」のために導入する設備のみが対象になります―
補助金の申請で最もよくある誤解の一つが、「必要な設備を買い替えるだけでも補助対象になるのでは?」というものです。しかし、新事業進出補助金では、「既存事業の延長」ではなく、「新たな事業への挑戦」を支援するという趣旨が明確に定められています。そのため、既存設備の単なる更新や修理ではなく、補助事業に新たに必要となる機械装置や工具・器具の導入でなければ、対象になりません。
たとえば、これまで手作業で製造していた部品を、自動化することで大量生産を可能にするために導入するNC旋盤や3Dプリンター、あるいは品質を安定させるための測定装置などは、まさに「新たな取組みを形にするための投資」として補助対象に該当します。
また、自社で設備を組み立てる場合、その部品の購入費用も「機械装置・システム構築費」として申請できます。たとえば、ベンチャー企業が独自開発した装置を製造する際に必要となる各種モーター、センサー、フレーム部材などが該当します。
一方で、注意しなければならないのは、対象外とされる物品も明確に定められている点です。「車両」「フォークリフト」「トラック」「船舶」「ドローン」「航空機」などの移動手段に関わる機器は、たとえ業務用であっても対象外です。また、製造機械であっても、型式や機能が変わらず「ただ古くなったから買い替える」だけの場合は、新事業に対する投資とはみなされません。
さらに、単価が10万円(税抜)未満の小型工具・備品は補助対象になりません。これは「小さな消耗品まで補助の対象にしてしまうと、制度の趣旨から逸れる」といった配慮によるものです。
補助対象となる設備の導入にあたっては、「この機器がなければ新しい事業が実現できない」と明確に説明できるかどうかが、審査上のポイントになります。
② ソフトウェア・情報システムの購入・構築・借用
―「業務を支えるシステム」は対象、宣伝目的のWebサイトは対象外―
デジタル化が進む現在、ITツールやシステムの導入は、業種に関わらず多くの新規事業に不可欠な要素となっています。新事業進出補助金でも、業務に直結する情報システムや専用ソフトウェアの導入費用は、機械装置と並ぶ重要な対象経費とされています。
たとえば、飲食業でテイクアウト専用の新サービスを始めるため、事前予約を管理するシステムや、LINEと連携した顧客管理システム(CRM)を構築するケースは、対象経費となります。あるいは、製造業で在庫管理の精度を上げるためにクラウド型のERP(統合業務管理)を導入するような場合も該当します。
重要なのは、「そのシステムが補助事業の遂行に不可欠であるかどうか」です。ただ便利だから、一般的に評判が良いからという理由では補助対象にはなりません。「何を目的に、どんな業務のどこを支援するシステムか」が説明できることが前提になります。
また、費用が100万円以上(税抜)となる場合には、より詳細な根拠資料の提出が求められます。たとえば、システムの要件定義書、作業内容ごとの単価・時間・担当者のリストなどです。これらは「見積書を正当と認めるための裏付け資料」となり、審査では非常に重要です。
一方で、対象外となるのが、PR目的のホームページ制作です。これはよくある誤解の一つです。「ブランド力を高めるためのWebサイトを新たに作ります」といった場合、それは広告宣伝・販売促進費に分類され、「機械装置・システム構築費」では申請できません。
また、ECサイトを作成する場合も、その内容が「補助事業の販売活動に必要なシステム」として業務と密接に関わっていれば対象になりますが、単なる会社紹介ページやイメージサイトであれば対象外です。
IT関連経費は範囲が広くなりがちですが、目的が「事業運営に必要な機能の確保」であることをはっきりさせることが、採択に向けたポイントとなります。
③ 改良・据付・運搬に要する経費
―「設備導入に付随する作業費用」も正しく申請すれば補助対象になります―
補助事業における設備投資は、単にモノを買えば終わりではありません。実際には、購入した機械を自社の現場に運び、設置し、場合によっては目的に応じた「改良」を施す必要があります。そうした、設備導入に付随する工程にかかる費用も、「①機械装置」または「②システム構築費」と一体で行われるものであれば、「機械装置・システム構築費」に含めて補助対象となります。
まず、「改良」とは、新たに導入する機械や装置、またはシステムの性能を高めたり、より補助事業に適した形にカスタマイズしたりする作業を指します。たとえば、新しく購入した製麺機に追加のカッターや安全カバーを取り付けて、製造速度や安全性を高めるといったケースがこれに当たります。また、既製品のソフトウェアに業種特有の処理機能を組み込むといった、仕様の追加開発も「改良」として扱われる可能性があります。
一方、「据付」とは、機械を設置するための作業を意味しますが、ここで注意が必要です。据付費用が対象となるのは、「軽微な作業」に限られるという点です。たとえば、新しい装置を置くために床にアンカーを打ち、機械を水平に設置する作業や、電源ケーブルを簡単に接続するといった程度のものが該当します。逆に、据付のために建物の大規模な改修や配線工事を伴うような場合は、「建物費」や「外注費」など、他の経費区分として扱われる可能性があります。
また、「運搬費」についても、「補助事業専用に購入した機器を現場に届ける費用」であれば補助対象です。たとえば、大型機械をメーカーの工場から自社の事業所まで輸送する費用、あるいは自社内で他拠点へ機器を移動させる際の運搬も該当します。ただし、日常的な物流費や配達料は対象外です。
これらの補助対象とされる「改良・据付・運搬費」は、あくまで①機械装置または②システムの導入とセットで実施されることが条件です。単独では申請できませんので、必ず関連性を明記し、見積書や仕様書でも「セットで実施されること」が確認できるようにしておくことが重要です。
補助金申請では、「設備そのもの」だけでなく、それを活用するために必要な準備工程も費用として認められるという点を理解しておくと、より実態に合った事業計画が立てやすくなります。ただし、その線引きや判断はやや複雑なため、不安な場合は事前に支援機関や専門家へ相談することをおすすめします。
機械装置・システム構築費の重要な補足
※1 :「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づく分類のみ対象
→設備の種類によっては補助対象にならないので注意
「機械装置・システム構築費」の対象となるのは、国が定める「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定義されているうち、「機械及び装置」「器具及び備品」「工具」に該当するものです。これに該当しない設備――たとえば、車両、運搬具、船舶、航空機などは、たとえ新事業に関係していても補助対象外となります(①で解説済)。
例:
- 自動車、トラック、フォークリフト → 補助対象外
- 製造機械、加工装置、検査装置 → 補助対象
したがって、導入しようとしている設備が「そもそも該当する資産かどうか」を事前に確認することが重要です。
※2 :借用(リース・レンタル)は補助期間中のみ/リースは条件付きでOK
→リース契約はタイミングと契約内容に注意
リースやレンタルで設備を導入する場合は、補助事業実施期間中に発生する費用のみが補助対象となります。補助期間を超えて契約が続く場合は、補助対象経費は按分(あんぶん)計算によって「補助期間分のみ」が対象となります。
さらに、リース会社との共同申請を行うことで、中小企業が直接購入しなくても、リース会社が機械を購入し、その費用に対して補助金を受けることが可能となります(①②③全体と関係)。
例:
- 補助期間中に新しい機械を1年契約でリース → 全額対象
- 補助期間を超える3年契約 → 補助期間内の使用分のみ按分対象
- リース会社と共同申請して新システムを導入 → 条件を満たせば対象
契約時期と期間、誰が契約主体かが非常に重要なポイントです。
※3 :自社で製作する場合の部品購入費も対象
→内製でも材料・部品費は補助対象になる
新たな機械装置やシステムを自社内で開発・製作・組み立てる場合、その構成部品や素材の購入費も「機械装置・システム構築費」として申請できます(①②③と密接に関係)。
例:
- 自社でロボットアームを製作 → モーター、センサー、フレーム材料の費用が対象
- 自社システムをエンジニアがスクラッチ開発 → 開発用ソフトウェアライセンスやサーバ費用が対象
外注せずに自社で完結させる開発も、正しく経費区分すれば補助対象になります。
※4 :単なる置き換えは対象外
→「今までと同じ物を新しく買うだけ」では認められない
新事業への挑戦という補助金の趣旨から、既存設備の単なる買い替えや更新は対象外とされています(①②の重要ポイント)。
例:
- 10年前に購入した機械と同じ機種を新たに購入 → 対象外
- 新機能を備えた設備に切り替えて、新製品を開発 → 対象
明確な「性能の違い」や「用途の違い」が示せるかがポイントです。
※5 :単価10万円(税抜)未満の機器は対象外
→少額設備・備品の申請は不可。見積の際にも要注意
「機械装置・システム構築費」に含められるのは、単価が税抜10万円以上の設備に限られます。複数個で合計金額が10万円を超えても、個々の単価が満たない場合は対象になりません(①との関連が大きい)。
例:
- 単価8万円の検査ツールを3個購入(合計24万円) → 対象外
- 単価12万円の装置を1台購入 → 対象
見積書では単価表示も明記されている必要があります。備品・ツールのまとめ買いに注意が必要です。
※6 :中古品も条件を満たせば対象
→「古い=ダメ」ではありません。適切な流通・見積があればOK
中古設備でも、以下の条件を満たせば補助対象になります(①に関係):
- 古物商の許可を持つ業者が3社以上
- 相見積もりが取得できていること
- 型式・年式が明記されていること
例:
- 3社の古物商業者から見積を取得 → 対象
- ネットオークションで個人から購入 → 対象外
中古を導入することでコストを抑えたい場合、上記のような「整ったルートでの取引」が必要になります。
※7:100万円以上のシステム構築費に必要な資料
→金額が大きくなるほど、根拠となる資料の提出が必須
補助金申請において、システム構築費が100万円(税抜)以上となる場合、単なる見積書だけでは不十分です。申請後の実績報告時に、以下のような詳細資料の提出が求められます。
必須となる資料の例:
- 要件定義書(どんな機能を実現するのか、設計の方向性)
- 費用見積書(詳細な項目ごとの費用内訳)
- 開発費用算出資料(以下の要素を含む)
- 作業単価
- 作業工数・作業時間
- 固定費用(ライセンス料など)
- 作業担当者名とその勤務記録
なぜ必要か?
大規模なシステム開発はブラックボックスになりやすく、費用の妥当性が外部から判断しづらいためです。これらの資料を通じて、「費用に対する合理的な裏付け」があることを証明する必要があります。
具体例:
- 自社向け予約管理システムをフルスクラッチで開発 → 要件定義書に「どのような機能をどの画面に実装するか」などを記載。
- システム会社が複数人で開発に関わる場合 → 各担当者の作業時間を記録した工数表を提出。
※8:PR目的のウェブサイトは「広告宣伝費」扱い
→用途が“宣伝”か“業務支援”かで、経費区分が分かれる
補助金でよくある誤解が、「ホームページ制作もシステム構築費に含まれるのでは?」というものです。実際には、「自社や製品のPR」を目的としたウェブサイト制作費は、「広告宣伝・販売促進費」に分類されます。
対象外となる例(広告費扱い):
- ブランドイメージを高めるための企業サイト
- 商品・サービス紹介用のPRページ
- デザイン重視のコーポレートサイト
対象となる可能性がある例(機械装置費扱い):
- ECサイト(商品管理・注文処理機能がある場合)
- 顧客向けポータルサイト(業務支援機能を含む)
重要なのは、「業務機能が中心か」「宣伝が中心か」という点です。
※9:「改良」は性能・耐久性を向上させる作業に限る
→単なる修理・補修はNG。新たな価値を生み出す改良であることが必要
「改良費」は、補助金で導入した機械装置に対して、「性能の向上や耐久性の向上を目的として行う工事やカスタマイズ」に対してのみ認められます。
補助対象となる改良の例:
- 製造機械に安全カバーやセンサーを追加して自動停止機能をつける
- 耐久性向上のために素材を変更する
- 処理速度を上げるためのプログラムチューニング
対象外となる例:
- 経年劣化部品の交換
- 故障した部品の修理
- 塗装の塗り直しなど美観の維持のみを目的とした作業
「新たに補助金で導入した設備が、より有効に機能するようにする」ことが前提条件です。
※10:「据付け」は設置に伴う“軽微な作業”に限定
→大掛かりな工事や改築が必要なものは対象外
「据付費」として補助対象になるのは、購入した機械・装置を現場に設置する際の軽微な設置作業のみです。
補助対象となる据付の例:
- 床にアンカーを打って固定する作業
- 配線を接続する軽作業
- 機械を水平に設置するための微調整
補助対象外となる例:
- 建物全体の構造変更
- 重機を使った大規模な搬入・基礎工事
- 専用の建物を新たに建設する工事
こうした作業は、「建物費」や「外注費」に分類されることになります。申請時には、「据付」が単なる設置であることを見積書などで明確にする必要があります。
以上、※7〜※10は機械装置費の申請や実績報告の中でも「見落とされやすい」「誤解されやすい」ポイントです。これらを正確に理解して申請内容に反映させることが、採択・実行の大きなカギとなります。必要に応じて専門家のサポートを受けながら、丁寧に準備を進めましょう。
【まとめ】機械装置・システム構築費を正しく理解して、確実な補助金申請を
ここまで、「新事業進出補助金」における機械装置費の内容について、対象となる経費や注意点、そして補足条項(※1〜※10)まで詳しく解説してきました。
要点をまとめると、補助金の対象となる機械装置費は、あくまで「新しい事業に取り組むために必要な設備投資」であり、単なる買い替えや修理、業務用とはいえども車両や運搬具などは対象外です。また、金額や内容に応じて、細かい要件や資料の提出義務が発生します。特にリースや中古設備、据付・改良などを含む場合は、経費区分や対象可否の判断が複雑になりがちです。
このように、機械装置費の判断は、「制度の趣旨」と「実際の設備の用途・性質」を丁寧に照らし合わせる必要があります。申請時には、「本当にこの経費は対象となるのか?」「必要な書類や条件は満たしているか?」といった点を、一つずつ確認しながら準備を進めることが不可欠です。
とはいえ、初めて補助金に取り組む方や、制度の文言に不安を感じる方も多いと思います。そんな時は、無理に自己判断せず、専門家に相談するのが最も確実な方法です。
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