補助事業を「知ってもらう」「売る」ための投資も支援対象
広告宣伝費・販売促進費の活用で、事業の成果を最大化する
新たな製品やサービスを生み出しても、それを誰にも知ってもらえなければ、事業としての成果は上がりません。特に補助金を活用して立ち上げた新事業は、投資した分の成果をしっかり回収するためにも、適切な販売促進やPRが欠かせません。
こうした観点から、新事業進出補助金では「広告宣伝・販売促進費」も補助対象経費として認められています。チラシやパンフレットの制作、広告出稿、ウェブサイト構築、展示会出展、プロモーション動画の制作といった、販路開拓・顧客獲得に関わる支出がこれに該当します。
この区分のポイントは、「補助事業で製造・提供する製品・サービスのための宣伝」であることが前提だという点です。たとえば、既存商品の広告や、会社全体のPR費用などは対象外となります。あくまで、「補助金を使って新しく始める事業に限った宣伝活動」が補助対象になるのです。
また、この経費には上限額が設定されているのも特徴で、事業計画期間1年あたりの売上高見込み額(税抜)の5%が上限となります。広告宣伝費はつい予算が膨らみがちですが、制度上は妥当性と実行時期の管理が強く求められます。
この記事では、公募要領の規定と注釈(※1~※6)に基づき、広告宣伝費としてどこまでが補助対象になるのか、どのような資料が必要なのか、申請の際に気をつけるべき点を具体的に解説していきます。
補助事業のPRに必要な広告活動は補助対象になる
どのような広告が認められ、どこまでが対象になるのか?
新たな製品やサービスを開発しても、その価値を市場に伝えなければ事業は広がっていきません。広告や販促活動は、事業を“回す”うえで不可欠な取り組みです。新事業進出補助金では、こうした「顧客に届ける活動」も支援の対象として認められており、広告宣伝・販売促進費として明確に経費区分が定められています。
まず、補助対象となる広告宣伝・販促活動の例としては、以下のようなものが挙げられます:
- 新商品を紹介するパンフレット・チラシの制作・印刷費
- 認知度向上を目的としたプロモーション動画や写真の制作費
- SNS・検索エンジンなどへの広告出稿費(バナー広告、リスティング広告など)
- 補助事業の内容や製品を紹介するためのウェブサイト構築費
- 展示会やイベントへの出展費用(ブース設営費や出展料など)
- 商品のブランディングやロゴ開発など、プロモーション戦略の外注費
これらはすべて、「補助事業により製造・提供する製品・サービスを市場に伝えること」を目的とした活動である必要があります。
上限は「計画売上の5%」まで(※1)
広告宣伝費の補助対象額には明確な上限があり、それは以下の計算式によって決まります。
上限額 = 事業計画期間内の総売上見込み額 ÷ 計画年数 × 5%
たとえば、3年間の計画で総売上見込みが6,000万円(税抜)とした場合:
6,000万円 ÷ 3年 × 5% = 年間上限額100万円 → 補助対象額は最大100万円までとなります。
この計算式により、仮に事業計画上売上が小規模であれば、それに応じて広告宣伝費の上限も低く抑えられることになります。つまり、「将来的にどの程度の売上が見込まれるのか」を適切に見積もることが、補助金額を決めるうえでも重要です。
ウェブサイト構築には追加資料が必要になる(※2)
補助事業に関連したウェブサイトの構築費も広告宣伝費に含まれます。ただし、ウェブサイトの構築費用が100万円(税抜)を超える場合は、実績報告時に追加の書類提出が求められます。
求められる資料は以下の通りです:
- 要件定義書(開発内容、目的、仕様を記した文書)
- 費用見積書(制作会社などからの見積明細)
- 開発費用算出資料(作業単価、工数、担当者の記録など)
これにより、「なぜこの金額になるのか」「誰がどの作業を担当したのか」「その金額は妥当なのか」といった審査が可能になります。特に、システムを含んだ複雑なウェブサイト(予約機能、会員管理、ECサイトなど)を構築する場合は、これらの書類が審査の中核になります。
一方、企業PRサイトや簡易的なランディングページなど、比較的軽量な構成であれば、100万円未満で収まることも多いため、提出資料の負担も比較的少なくなります。
金額に関わらず見積書が必要(※3)
広告宣伝費に計上するすべての支出については、金額の多寡に関わらず複数者からの見積取得と価格妥当性の確認が必要です。
これは、広告という業務の特性上、価格の幅が大きくなりやすいため、不当な水増しや過剰請求を防ぐ目的があります。たとえば以下のような場合でも、原則として最低2~3社の見積もりが求められます:
- チラシ印刷:複数の印刷会社から比較
- 展示会ブース装飾:内装会社数社から見積取得
- バナー広告:複数媒体での価格比較、単価の妥当性説明
また、見積書に記載された内容と実際に支出した項目が一致しているかどうかは、実績報告時のチェックポイントとなります。事前に見積を取るだけでなく、契約内容と成果物が整合しているかどうかの確認が不可欠です。
補助事業期間内に「広告が実際に使用されていること」が必要(※4)
広告宣伝・販売促進費は、見た目の成果が見えやすい経費である一方で、「本当に補助事業のためのものか」「いつ、どのように使用されたか」といった点が細かくチェックされます。注釈※4~※6には、まさにその確認ポイントが示されており、正しく理解していないと補助対象外となるリスクもあります。
広告宣伝費の申請において最も見落とされがちなのが、使用・掲載のタイミングに関する条件です。補助金では「補助事業実施期間」が明確に定められており、その期間内に以下のようなアクションが完了している必要があります:
- 印刷物が配布されている(チラシ・パンフレットなど)
- Webサイトが公開されている
- ネット広告が掲載された期間が事業期間内に含まれている
- 展示会が開催されている(出展実績がある)
つまり、「制作しただけ」では補助対象になりません。補助事業期間が終了したあとに配布・掲載した場合、その費用は補助の対象外となる可能性があるため注意が必要です。
また、補助金の大前提として「交付決定後の発注・契約が必要」というルールがあります。交付決定前に先行して広告を発注・契約していた場合、それも補助対象外です。広告はスケジュールがタイトになりやすい業務ですが、「いつ契約し、いつ使うのか」という時期の管理が非常に重要です。
実績報告では「証拠書類」が不可欠(※5)
広告宣伝費は、事業終了後に提出する実績報告において、成果物の提出が義務づけられています。 これは、補助事業で実際にどのような広報活動を行ったかを可視化し、適切な支出だったかどうかを審査するためです。
具体的には、以下のような資料を揃えておく必要があります:
- 制作物の現物または写真(パンフレット、チラシ、展示会ブースなど)
- ウェブサイトのURLと公開日、スクリーンショット
- ネット広告の掲載時期、掲載画面のキャプチャ、成果レポート(インプレッション数やクリック数など)
広告代理店や制作会社に外注した場合は、納品物とともに納品日や使用開始日が分かる報告書も保管しておくことが望ましいです。電子媒体の広告(SNS、リスティングなど)については、媒体から取得できる管理画面の履歴などをエビデンスとして活用できます。
このように、広告成果を証明するには、「実施したことが分かる証拠」が必要になります。「やりました」だけでは通用しないという前提で、準備を進めることが重要です。
目的外使用は補助対象外。「何をPRするか」で線引きされる(※6)
広告宣伝費の中でも特に注意すべき点が、「補助事業に関係ない内容は補助対象にならない」という原則です。以下のような支出は、すべて補助対象外とされます:
- 自社の既存製品やサービスの広告費
- 会社全体のイメージ向上を目的としたPR広告
- 市場調査、マーケティングリサーチ費用
たとえば、「新事業に関するPRページの下に既存製品のバナー広告を出した」「新サービスと同時に会社紹介パンフレットも作った」といったケースでは、どこまでが補助対象で、どこからが対象外なのかが不明確になります。
補助金の趣旨は、あくまでも「新事業を社会に定着させること」にあります。そのため、「この広告は補助事業のどの部分を広報するものなのか?」を説明できることが必要です。
広告内容が混在する場合は、制作物を分ける、支出を按分する、説明資料を添えるといった工夫が求められます。目的が補助事業以外に及んでいると判断されると、補助対象全体が否認される可能性もあるため、線引きには細心の注意が必要です。
【まとめ】広告宣伝費の活用には、制度の理解と計画性が不可欠
「何を、いつ、どこまで」PRするかを、明確に示せるかが鍵
補助金を活用して新たな事業を始めるとき、その成果をより多くの人に届けるためには、的確な広告宣伝・販売促進活動が不可欠です。新商品や新サービスをただ「作る」だけでなく、「売る」ための取り組みにも補助金が使えるというのは、制度上とても心強い支援です。
しかし、広告宣伝費という経費区分は、一見自由度が高いようでいて、実は細かく管理される領域でもあります。内容や時期、成果の証明など、申請から実績報告に至るまで多くの注意点が存在します。
特に重要なポイントは次の通りです:
- 広告の内容が「補助事業に限ったもの」であること
- 契約・掲載・配布などが「補助事業実施期間内」に行われていること
- ウェブサイト構築費が高額な場合は、仕様書や工数明細などの追加資料が必要
- 成果物の写真、スクリーンショット、配布記録などを「証拠」として残しておくこと
- 見積書の取得は金額にかかわらず必須で、価格の妥当性が求められる
さらに、会社全体のブランドPRや、既存製品の広告、単なる市場調査費用などは補助対象外となります。「何を宣伝するための支出なのか?」を、制度の趣旨と照らし合わせて説明できなければ、たとえ広告活動自体が適切でも補助対象とは認められません。
こうした制度の条件は、一見シンプルに見えても、実際の運用では判断が難しいケースが多くあります。たとえば、ひとつのチラシに複数の製品を掲載する場合や、PRと採用活動を兼ねたウェブサイトを構築するような場合には、「何が補助対象か」「どこまでが補助金でまかなえるか」を丁寧に区分する必要があります。
そのため、「広告宣伝費を活用したい」と考えた時点で、早めに補助金制度に詳しい専門家や支援機関に相談することをおすすめします。事前に内容を整理し、見積の取り方や成果物の扱いまで相談しておけば、交付後のトラブルや減額リスクを大きく減らすことができます。
広告活動は、事業を“知らせる力”そのものです。制度の条件を正しく理解し、戦略的に活用することで、補助金の成果をより広く、確実に届けることができるようになります。わずかな確認不足で大きな補助が無駄にならないよう、ぜひ慎重に、そして前向きに活用を検討してください。


